2020.06.08
「Sph」って何?「軸度」って?~眼科医のメガネ処方箋の見方~
健康診断や学校検診、運転免許の更新などで多くの方が経験する「視力検査」。アルファベットの「C」のような、円の一箇所が掛けているマーク(正式名称は『ランドルト環』といいます)を見ながら、「上」「左」「下」「右」などと答えながら、どの大きさまで見えているかを遮眼子(しゃがんし)といわれるスプーンのようなもので片目を隠して検査します。子どもの頃からおなじみの検査ですね。
すると、「私は、目がいいから」なんて言っていた方が、いつもは見えていると思っていたけど「あれ? 見づらくなってる…」と気づきます。そして、検査する方から「0.7が見えていませんね」と急に言われて、そこで初めて「視力が落ちてたんだ…」「私って見えてなかったんだ…」とビックリします。
その後、多くの方が眼科の先生に「視力が落ちているようなんですけど…」と相談して検眼します(運転免許証の更新ですと、視力がクリアできませんからね)。すると眼科の先生から必要に応じ、「メガネを使った方がいいですね」などと言われます。そして、眼科で検査をしてもらうと薬と同じように「眼鏡処方箋」をいただくのです。
この「眼鏡処方箋」。見てみても、ふだん見たことのない記号や文字で、さっぱりわからない方が多いと思います。それでは、「眼鏡処方箋」には、どのような情報が記載されているか、いまあなたの視力はどのような状態なのか、ここで徹底解説します。
そもそも見づらくなる目の状態とは?
目の状態には、おおまかに分けると、正視、近視、遠視、乱視、老眼があります。
簡単に言えば、「正視」はメガネをまったく必要としない目の状態。「近視」は遠くがぼやける人、「遠視」は遠くを見るにも近くを見るにも目の筋肉(調節力)を使う目の人、「乱視」はものが二重にぼやけたり、にじんで見える人、そして「老眼(老視)」は目の筋肉(調節力)が加齢により衰えて近くが見づらくなった人のことをいいます。
「眼鏡処方箋」には、この5つの目の状態(屈折状態)のうち、今どの状態で、どのくらいのメガネの度数を使えばいいのか良いのかが記載されています。
例えば記載されている度数を見ると、自分は「弱い近視」なのか、または「強い遠視で乱視もある」のか。「老眼が入っている」などがわかります。
なお、「視力」と「度数」は違いますので混同しないよう注意してくださいね。
「眼鏡処方箋」の見方
「眼鏡処方箋」には、決まった書式はありません。眼科の先生によりさまざまです。しかし、使用している言葉などはほとんど同じですので、ポイントだけでもつかめば誰でも理解できます。
では、ポイントを簡単に説明していきましょう。
①FOR DISTANCE( 遠用 )
遠くを見るときに掛けるためのメガネの度数です。ふだんから使用するメガネや運転の時だけに使用するメガネの場合、この欄に記載されます。処方箋によっては、遠用という文字が丸囲いされていたりします。
②FOR READING( 近用 )
老眼鏡などで近くをみる時のメガネの度数です。読書や裁縫、デスクワークに使用するメガネの場合、この欄に記載されます。
③P.D(瞳孔間距離)
右目の中心(瞳孔)と左目の中心との幅です。数字単位はミリで表現されます。メガネのレンズの中心部を、右目の中心、左目の中心に合わせるために記載されています。
④SPH(Sまたは球面)
近視または遠視のレンズ度数の強さを表します。数字単位はD(ディオプター、ディオプトリー)で、+または-の符号がつきます。+の符号は遠視の度数、-の符号は近視の度数を表します。1段階が0.25ピッチですので、+1.00Dと記載あれば4段階の遠視、-3.75Dとあれば15段階の近視の度数が入っています。一般的に近視では、-0.25D~-3.00D未満が「弱度近視」、-3.00D~-6.00D未満が「中等度近視」、-6.00D以上が「強度近視」と言われています。
なお、「視力」と「度数」は違いますので混同しないよう注意してくださいね。
⑤CYL(Cまたは円柱)
乱視のレンズ度数の強さを表します。数字単位などの考え方は④SPHと同じですが、多くの眼科医院では-符号を使用して乱視の度数を表現します。(+符号を使用する場合もあります。) 乱視の場合「近視と乱視」や「遠視と乱視」など複合的なる場合が多いです。
⑥AXIS(AXまたは軸度)
乱視の処方がされた時には、必ず記載があります。角度と同じ「°(度)」で表現され1~180の数字で表現されます。AXISは「方向性」を記しており他の項目と違い「度数の強さ」ではありません。乱視のレンズはラグビーボールのような形をしており、ラグビーボールの頂点部をどの方向(軸度)にするかを決める必要がります。乱視の度数(強さ)は一緒でも、軸度が90度と180度では、見え方はまったく異なります。
⑦PRISM(プリズム または △)
目の中心(瞳孔)とレンズの中心を合わせて作ることは、③P.Dで触れましたが、目の状態によっては目の負担や見え方を考慮し、あえて目の中心とレンズの中心をずらして作製する場合があります。その際はこのPRISM欄に記載されます。数字単位は0.25ピッチで単位は△(プリズム)で表現されます。
⑧BASE(基底 または 基底方向)
CYLのAXIS同様、⑦のPRISMの度数が記入されていると必ず記載されています。これは、光をどの方向に曲げるかの向きを示しています。左右は「Base in」や「Base out」、上下は「Base up」または「Base down」、または乱視同様に軸度(0°~360°)で方向を表します。
「視力」と「度数」は違う
学校や病院での健康診断、運転免許など資格取得時に必要な条件など、私たちは普段から「視力」という言葉には親しみがあると思います。
「視力は1.2だから、目がいい」とか「両目で0.7だから、運転免許はギリギリ大丈夫」といった会話はよく聞かれます。
しかし、処方箋で主に書かれているのはレンズの「度数」。
希望の“視力”を出すために、「どのようなレンズ」に『どれくらいのレンズの強さ』を入れるのか。(強さとは「レンズの硬さ」ではありません)
この『どれくらいの強さ』を表すのが『度数』で、度数は「+2.00D」や「-3.75D」など、プラスやマイナスの符号と、3桁の数字、D(ディオプトリー)という単位で表され、視力とは異なります。
「度数」で大体の「視力」はわかるの?
人間の眼は千差万別で、乱視など複合的な要素もあるので、一概に「度数」と「視力」を結びつけることができません。
なので、例えば「度数が『S-1.25D』だから、視力は『0.6』です」みたいなことはなかなか言えません。
正確な視力は、眼科や病院、メガネの専門店で確認するのが一番です。
まとめ
ほかにも、分度器のような絵に太い線が引いてあったり、遠近両用という文字に〇がついていたり、眼科医によって、書き方はさまざまです。眼科での検眼時に、先生から説明はあると思いますが、メガネを作る際にメガネ店に聞いてみるのもいいですね。自分のいまの目の状態を知っておくことはとても大切です。メガネのイタガキでは、「眼鏡処方箋」をお持ちいただいた方には、ていねいに処方箋の内容をご説明しています。安心して「眼鏡処方箋」をお持ちください。